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時刻の不思議

ここでいう「時刻」とは一日の中の時点を示す「〇時〇分〇秒」の事です。

時刻の2つの系統

この時刻には実は複数の種類があるのですが、大別するなら2つの系統があります。

1つは1日を必ず86400秒(=24×60×60)とする時刻、もう一つは時々そうしない時刻です。

我々が日常使っているのは後者の時刻ですが、何の話をしているか気付いたでしょうか。

閏秒」の事を言っています。

閏秒は稀にニュースになるので知っている人もいるかと思いますが、時々「今日は時刻を正すため、普段より1秒少なく、23時59分59秒までとなります。」などと報道されるものです。

この閏秒のために1日が86400秒とならないことがある時刻の系統を「世界時」等と呼び、閏秒無しで必ず1日が86400秒とする時刻の系統を「地球時」等と呼びます。

当然両者は年月を経るに従って乖離していき、2024年では1分13秒もズレが生じています。

閏秒が必要な理由は、そうやって時刻を補正しなければズレがどんどん蓄積されて、やがては、今日は午後の12時に日の出になります、なんてことになってしまいます。

では、そういう補正をしない地球時は誰が使うのかと言うと、科学者です。「1日」の物理量が年によって違うなんて事では科学者は困ります。地球時は必要なのです。

いやそもそも時計が不正確なだけだから、現代のテクノロジーでもって1日を測る時計の精度を上げれば良いだけでないか、と思った人もいるでしょう。

そうではありません、時計は十分に正確なのです。閏秒を必要とする原因はそこではなく、他にあります。

地球は生卵

卵をテーブルの上でくるくると回転させた時、茹で卵は安定して回り続けるのに対して、生卵だと回るスピードにムラができて安定してしません。

地球は茹で卵か生卵かといえば、生卵の方です。地球の表面こそ地殻がありますが、多くは海の水を満たしており、地殻の下もドロドロに熔けたマントルが対流しています。そのため、地球の自転速度は生卵のように安定せず、とどのつまり、1日の長さが長くなったり短くなったりします。

しかもそれは全くの不規則で、2,3年後に今より早くなっているのか遅くなっているのかさえ現代科学をもってしても予想できません。

予想ができない以上、実際にズレが生じたことが観測されたらズレを正すということをするしかありません。それが閏秒です。

ΔT

閏秒で生じたズレはその度に積算されていくのですが、積算されたズレの事を「ΔT」といいます。上に書いた通り予測困難であり、未来だけではなく過去どうであったかも正確には知りえません。

閏秒がプラスのこともマイナスの事もある、ならば長い年月では平均化されてゼロに近づくのでは、という期待は完全に誤りです。生卵の回転が次ぐに止まってしまうのと同様、地球の自転速度は長期的には減少していきます。にも拘わらずここ数十年は地球の自転速度は速くなり続けています。何故かという理由はありません、予測困難とはそういう事です。

紀元元年くらいに遡ればΔTは3時間にもなり、紀元前3世紀くらいにはなんと20時間にも及びます。

 

ΔTはおそらく、昔の暦あるいは天体現象を計算する上で最も確度の低い情報と言えるでしょう。
地球・月・太陽と言った天体が特定の時刻にどの位置にあるかは紀元前遡っても観測と天体力学の計算で高い精度で算出することができます。それによって紀元前○○年に皆既日食が起こったであろうことを言い当てることもできます。ただし、皆既日食が起っている時に地球がどっちの方向を向いているのか、つまり地球のどの地域で皆既日食が見えているのかが、遥かに精度が下がってしまうのです。

では現代の科学者はどうやって紀元前のΔTを求めているのでしょうか。

それは基本的には上に書いた事の真逆の発想です。つまり地球で日食・月食など観測された記録を繋ぎ合わせる事で統計的にΔTを推測しているのです。

その点で、ΔTは世界時と地球時の差と説明しましたが、別の見方としては特定時刻に地球がどっちを向いているかを示す指標がΔTという事も出来ます。