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西暦の「A.D.」は何の略か(ちょっとだけ深く考える)

西暦の「A.D.」は、ラテン語「Anno Domini」の略で「主の年に~」という意味です。

これまあネットを検索すれば普通に見つかる説明だと思いますが、最後の「に~」が付くのが気にならないでしょうか。「に~」無しにすることはできないのか…などと思わないでしょうか。

ここでは、このラテン語「Anno Domini」について説明したいと思います。

「に~」無しにできないか

「に~」無しにできないかと言えば、全く問題なくできます。ラテン語では「Annus Domini」と書けばよいのです。

「A.D.」は「Annus Domini」の略で「主の年」という意味です、と言っても全然間違っていません。

 

では、何故「に~」が付いた方を挙げるのでしょう。

正直分かりません。別に文法的な理由があるわけではなく、時間を表す表現は何故か副詞的な表現を代表させる慣習なのです。

あるいは単にラテン語を知らない人が無思慮にそうすることを広めてしまっただけかもしれません。

ラテン語の「格」

AnnoとAnnusの違いは同じ単語の格の違い、前者は奪格、後者は主格です。

格とはラテン語の単語の語尾変化の一つで、日本語の「てにをは」に相当します。英語では単数・複数で語尾変化しますが、ラテン語ではそれに加えて性と格によっても語尾が変化します。

一つの単語は通常6つの格を持ち一般的には主格を代表させます。例えば「太陽」ラテン語で何と言う?と聞かれれば複数ある格変化形の中から主格を代表として選び、「sol」です、と答えます。敢えて奪格で「sole」です、と答える人はいないでしょう。

ですので、Anno  Dominiで間違っているとは言いませんが、上に述べた理屈は頭の片隅にいれておくと良いでしょう。

書き忘れていましたが、Dominiの方は、「主 Dominusの属格」の変化形です。

余談ですが、小文字でa.d.と書いた場合はAnno Dominiではなく、日付の表現で使う「ante diem」の略と解されます。

したがって「西暦」の方は大文字で「A.D.」と書くことに気を付けた方が用でしょう。